第31回日本舌側矯正歯科学会に参加しました 横浜マウスピース矯正
10/14(日) 福岡・博多で行われた日本舌側矯正歯科学会に参加しました
今回のテーマは、「リンガル矯正とアライナー矯正の現状と未来」
舌側矯正学会とはいえアライナーについてメインテーマに上がり、同じ目立たない矯正として関心の高さがうかがえました。
私もインビザラインをスタートした同時期から舌側矯正も臨床に取り入れていましたので学会やセミナーに参加しており、またコデンタルのプログラムもバリエーション豊富なので楽しみな学会の一つです
午前中は、
特別講演:河村純先生の「舌側とアライナー矯正のバイオメカニクス」
招待講演:Seong-Min BAE先生の「Lingual treatment for lip protrusion patient with uprighted inclination of upper incisors」
教育講演:石川博之先生の「矯正治療の効果をどのように評価するか」 が行われておりました。
河村先生の講演では、唇側・舌側・アライナーの装置がどのような移動を行うか、代表的な移動方法別にコンピューター上で有限要素解析を用いた解説が興味深かったです。ワイヤーから力が加わり回転や圧下の力が複雑に作用しながら移動していく様がわかりやすく動画で示されていました。また、アライナーを使用した際の解析では、アタッチメントの有り無しで予測実現性の差が明らかにデータとして出ていました。
別会場では、一般口演でリンガル症例や治療のトピック、コデンタルによる発表も催されていました
下田先生の講演では、犬歯と第一大臼歯がアイデアルワイヤーと接する位置にポジショニングされるためカスタムメイド用フロアブルレジンとZero Egg Bracketを紹介されていました。ストレートワイヤーの治療を可能にするため、チューブをレジンで作成できるまでの強度が得られるようになったことには驚きました
寺谷先生の講演では、患者ニーズに合わせた装置選択、終了後アンケートからも患者満足度がうかがえました。術者の都合にあわせるではなく、患者の生活スタイルや希望、予算を考慮しできる限り応えてあげる、そのためにリンガルもハーフリンガルも、アライナーも患者の希望にできる限りこたえるために研鑽することが大切だと共感しました。
他、コデンタル一般口演も興味深いトピックが多くありました
午後からは 、
パネリスト講演です。アライナー矯正とリンガル矯正を専門とされるパネリストの先生が、それぞれの立場から治療の一例をふまえて解説され、その後パネルディスカッションに続きました。
アライナー矯正では、佐本先生が「アライナーによるClassⅡ治療の利点・欠点」、藤山先生が「Clear Plastic Applianceを用いたClassⅡdivision1不正咬合の矯正治療」というテーマでお話しされました
今回はClassⅡの症例をテーマに、アライナー特有の遠心移動の内容と2級1類の抜歯リスクについての考え方をそれぞれお話しされました。藤山先生がおっしゃっていましたが、「ワイヤーは引く力 アライナーは押す力」その違いが特徴的として現れているのが遠心移動です。特に2級1類を上顎小臼歯抜歯した場合(特に下顎5番も抜歯)近心移動量が多いほど、ボーイングエフェクトや前歯DeepBite量が増加する傾向になります。また、顔貌プロファイルが悪くなく、大臼歯を近心へロスする量が多い設定で仕上げるゴールは、前歯のリトラクション量が少なくなると推察される。そのため大臼歯を遠心移動して1級関係を確立した場合の前歯位置と同じ結果が得られるのであれば、DeepBiteを改善することもできるため非抜歯を選択したほうが賢明なのではないかという意見でした。
佐本先生がおっしゃりたいことは、装置の違いで診断が狭まるのではなく、生体に順応する最終位置を目指して理想的な歯列や歯牙移動を考えなければいけないということです。画一的な診断プロセスではなく、現代のテクノロジーや生体力学を応用したそれが可能となった時代だからこそ今まで通例とされてきた治療や診断を見直す時期にきているのではないか、またそれが結果的に患者の負担を減らすことにつながればそれがベストな治療になるのではないかという提言です。
リンガル矯正から、宇津先生が「舌側矯正におけるワイヤーブラケットシステムの特性」、酒井先生が「矯正歯科治療の基本に戻る」、佐奈先生が「リンガル矯正の特徴と症例報告」の講演でした
佐奈先生の症例では、重度な鋏状咬合改善方法として、セクショナルワイヤーをスクリューで引くケースはリンガルでもアライナーの治療でも応用できそうなヒントとなりました。
いずれの先生方も、装置は矯正治療を行う上でひとつのデバイスにすぎず、しっかりとした診断を行い治療する重要性は共通した意見だったと思います。
リンガルだから、アライナーだからと議論がかみ合わない部分もあり、それはお互いの矯正方法や起こる事象が何に起因しているのかが理解しあえていないからだと思いました。
アライナー治療はクリンチェックをはじめとするデジタル技術の応用により治療適応の幅が広がったことに加えて、ワイヤー矯正と違ったメカニクスで歯を移動できる、またそれを使いこなす技量と経験値がもっとも大切なことだと感じました。
リンガル矯正においても、様々な考え方の中でブラケットを使い分けワイヤーをベンドし、スクリューや補助的デバイスを使いゴールにむかう技術はまさに職人技だと思います。リンガルこそドクターによる手技のレベルの差が如実に現れるのではないかとも感じました。
リンガルの方が上手く治療できるわけではなく、最終的にゴールまで持って行くには至難の業であるのはアライナーと同じです。
問題とされるのは未熟なまま安易に治療をすすめたり、リカバリーテクニックを知らないまま難症例をスタートさせることであって装置の違いが治療結果にそのまま結びつくというわけではありません。
学会を通じて、どんな装置を使うにしてもその先には患者さんがいて、短くない矯正治療期間をどのように過ごし、矯正が終わった後も長期的に安定できる矯正治療を提供することが大切なのではないかと改めて感じた1日となりました。
後記
学会の合間には、少し足をのばして宮地嶽神社へお参りに行ってきました。
数年前に嵐のJALのCMで話題になったスポットでもあります。
ちょうどこの日は、春と秋の数日間、海へつづく一直線の参道に夕日が沈む景色を見ることができる「光の道」のタイミングで、とても幻想的な光に包まれた時間を過ごすことができました
台風の被害が早く復旧されますように、また皆様の健康と発展をお祈りし九州の地を後にしました。
診療のご予約・無料相談
カテゴリー:Dr.Keiko Diary